学生ボランティアグループ(VG)「福島スタディツアー」開催報告

2026年4月2日 公開

― 震災の記憶を学び、防災を自分ごととして考える2日間 ―

2026年3月5日から6日にかけて、東京科学大学学生ボランティアグループVG(以下、VG)は、「震災に学び、未来を考える 福島スタディツアー」を開催しました。VGは東日本大震災を契機に発足し、復興支援・防災・地域連携活動に取り組んでいる学生団体です。

本企画は、「震災・防災・復興に関心はあるものの、被災地を訪れたことがない」という学生に向けて実施したものです。現地でしか得られない学びを通して、防災・減災を“自分ごと”として捉えるきっかけづくりを目的としています。

東日本大震災・原子力災害伝承館にて、参加者全員で記念撮影

事前学習

出発に先立ち、2月17日に学内で事前学習を行いました。リベラルアーツ研究教育院の弓山達也教授の進行のもと、「なぜ被災地で学ぶのか」をテーマに意見を交わし、参加目的を明確にしました。あわせて、VGメンバーから訪問先の紹介が行われ、参加者一人ひとりが本ツアーでの学びについて考えを深めました。

事前学習で意見を交わす参加者たち

スタディツアー1日目(3月5日)

1日目は、「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪問しました。福島県は、地震・津波に加え、東京電力福島第一原子力発電所事故という未曾有の複合災害を経験しました。展示見学を通して被害の実態や復興への歩みに触れるとともに、実際に震災を経験した語り部の方から当時の状況や現在に至るまでの思いをうかがいました。語り部の方の言葉に耳を傾けながら、参加者は震災をより身近な出来事としてとらえ自分事として捉え直しました。

続いて、フィールドワークとして、双葉町や浪江町の被災地をバスで巡りました。同乗していただいたフィールドパートナーから説明を受けながら、まず訪れたのは「震災遺構・浪江町立請戸小学校」です。海から約300メートルの位置にあった校舎は、被災当時の姿のまま保存されており、参加者は津波被害の大きさを現地で実感しました。同校は大きな被害を受けながらも、児童・教職員全員が無事に避難できたことでも知られています。
次に、「大平山霊園」を訪れました。ここには、津波などで亡くなられた方々の名前が刻まれた慰霊碑や墓地があり、請戸小学校の児童たちが避難した場所としても語り継がれています。慰霊碑の前で震災で亡くなられた方々に思いを馳せるとともに、震災の爪痕が残る地域や更地となった一帯を望みながら、参加者はそれぞれに思いを深めました。

また、フィールドパートナーの案内のもと、双葉駅周辺を徒歩で巡りました。避難指示の解除が遅れた地域でありながら、復興の進展が見られる現地の様子を通して、被災当時と現在の姿を比較しながら理解を深めました。

1日目の締めくくりには、振り返り学習を実施しました。参加者は4班に分かれ、印象に残ったことを付箋に書き出して共有しました。各自の気づきを深めるとともに、「本当の意味での復興とは何か」をテーマに活発な議論が行われました。

震災遺構・浪江町立請戸小学校
「東日本大震災津波浸水深ここまで」表示を見上げる
大平山霊園で説明を聞く様子
双葉町消防団第二分団の旧屯所に残る震災の爪痕
アートの力で人々の心に火を灯すという想いから生まれた「FUTABA Art District」
1日目の振り返り学習で意見を共有する参加者たち

スタディツアー2日目(3月6日)

2日目は、「とみおかアーカイブ・ミュージアム」を訪問しました。本施設は、富岡町の地域資料や、東日本大震災および原発災害に関する震災遺産を収蔵・展示しています。参加者は地域や町民の視点から災害について学びました。展示されているパトカーは、震災当時、住民の避難誘導にあたっていた警察官が乗車していたものであり、津波により流されたその姿は、災害の凄まじさを物語っていました。

続いて「いわき震災伝承みらい館」を訪れました。「記憶の記録化」と「記録の記憶化」という2つの機能を軸とする本施設では、いわき市が経験した複合災害について学ぶとともに、防災・減災・備災について自ら考える機会を得ました。

さらに、いわき市の震災語り部ガイドによる案内のもと、薄磯地区や豊間地区をバスで巡りました。豊間公園(いわき市防災公園)では、非常用発電設備やトイレなどの防災機能について説明を受け、災害時の拠点としての役割について理解を深めました。語り部からは、震災の記憶を未来につなぎ、防災を自分事として捉えることの重要性が強く伝えられました。

2日目の最後には、語り部ガイドの方も交えた振り返り学習を行いました。1日目の議論を踏まえ、本ツアーで得た学びと今後の生活への活かし方について意見を交わしました。

震災時、住民の避難誘導中に津波にのまれたパトカー(とみおかアーカイブ・ミュージアム)
津波で被害を受けながらも蘇った旧豊間中学校の「奇跡のピアノ」(いわき震災伝承みらい館)
豊間公園のベンチ(柱内にテントが装備されており災害時にはシェルターになる)
語り部ガイドの解説に耳を傾ける参加者たち
2日目の振り返り学習で、ツアーの学びを共有する参加者たち
ツアーの最後に、語り部ガイドとともにいわき市震災伝承みらい館で

事後学習

スタディツアー終了後の3月9日には、学内で事後学習を実施しました。参加者は、ツアーのなかで、見たもの・聞いたものの中からひとつを選んで「問い」を立て、全員で共有した上で少人数グループに分かれて「対話」を行いました。今後は、参加者全員の「問い」を集約した文集を作成し、本スタディツアーの成果として公開する予定です。

VGでは今後も、被災地での学びを次世代へつなぎ、防災・減災を「自分ごと」として考えるきっかけづくりに取り組んでいきます。

※本ツアーは、公益財団法人電通育英会「2025年度 学生を対象とする次世代リーダーの育成活動に対する助成事業」の助成金を活用して実施しました。また、大岡山学生支援センターからも補助を受け、開催しました。

参加者のコメント(一部抜粋)

  • 充実した2日間をありがとうございました!ここまで被災地の現在や、これからの防災・備災(これも今回知った言葉でした)に向き合える機会はなかなかないので非常に有意義な時間でした。
  • 今回のスタディツアーによっていかに自分の震災、防災への意識が低かったかわかった。自分の目で現地の状況を見ることで、自分事にできると感じたため、多くの人にスタディツアーに参加して欲しいと思った。
  • 語り部ガイドは特に勉強になりました。一見普通そうな風景にもその裏の背景を知ると、一気に理解が深まりました。

VGメンバーのコメント

松尾祥汰さん(工学院情報通信系博士1年)
私は初めて震災遺構・伝承館を訪ねた際に、建物に残る津波の爪痕や、語り部さんから聴いたお話から大きな衝撃を受けました。その体験は、自分の視点から「命を守ること」を捉え直すきっかけになり、「メディアを介さない直接的な学びの場をより多くの学生に提供したい」というスタディツアーを企画する原動力にもなりました。
今回のスタディツアーでは、理工学系・医歯学系を問わず、多様な専門分野・学年の方々が参加してくださいました。震災の記憶や被災地に赴く意義は異なっていたはずですが、「実際に被災地を訪れ、震災について何かを知りたい」という点は一致していたように思います。ツアー当日の振り返りワークショップでは、活発な意見交換が続き、時間が足りなくなるほどでした。参加された方々にとって、今回のスタディツアーが防災・復興を「自分ごと」として考えるきっかけとなることを期待すると共に、その輪がより一層広がっていくことを願っています。
今回のツアーで訪れた地域の中には、福島第一原発の事故によって、数年前まで立ち入りや居住ができなかった場所もありました。そのような地域では今もなお、地震で崩れたままの建物や震災の日の洗濯物が吊るしたままの部屋などが残されています。これらの光景は、未曾有の巨大津波による被害を想定できず、原発という科学技術を制御し切れなかった結果もたらされたものです。私は、情報通信という分野から科学技術の発展に関わる者として、自然の怖さ・科学技術を信じたくなる人間の弱さを決して忘れてはならないと感じました。
最後になりましたが、本スタディツアー開催にあたり助成いただいた電通育英財団様、準備・運営をサポートしていただいた先生・職員の皆様、そして一緒に活動してくれたVGメンバーに心より感謝申し上げます。

東京科学大学学生ボランティアグループ(VG)について

大岡山学生支援センター未来人材育成支援室に所属する学生団体で、東日本大震災での写真洗浄活動をきっかけに誕生しました。現在は、復興支援・防災活動・地域連携を軸に、学内外でさまざまなボランティア活動を実施しています。具体的には、工大祭およびホームカミングデイでの被災地復興支援物産展、学内防災訓練の補助、こども食堂、教科書・参考書の寄付・譲渡の仲介(古本市)、コンタクトレンズ空きケース回収などがあります。週1回Taki Plazaにてランチミーティングを行っています。

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