第4回インペリアルカレッジロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム(Imperial-Tokyo Tech Global Fellows Programme 2024) を実施

2024年11月22日 公開

インペリアルのメインビルディングの前で

2024年9月9日から9月13日にかけて、第4回インペリアル・カレッジ・ロンドンとの博士後期課程学生交流プログラム(Imperial-Tokyo Tech* Global Fellows Programme 2024) を実施しました。

本プログラムは、東京工業大学*と英国インペリアル・カレッジ・ロンドン(以下、インペリアル)が共同で2018年に立ち上げた合宿トレーニング型国際交流プログラムであり、専門分野や国籍の垣根を超えたコミュニケーション力の醸成やリーダシップの育成、若手研究者のネットワーク構築等を目的としています。

2019年にロンドンで第2回のプログラムを開催後、コロナの影響による3年間の実施中止を経て、2023年に第3回のプログラムを日本(東工大)で実施しました。ロンドンで開催した、今回のプログラムは、国連が提言する持続可能な発展に向けた世界を変える17の目標SDGs(Sustainable Development Goals)の中にある「#3. 健康と幸福 (#3. Good Health and Well-being)」をプログラムテーマに、インペリアル・カレッジ・ロンドンのサウスケンジントンキャンパス、ホワイトシティキャンパスで実施されました。

13名の本学学生とインペリアルの15名の学生、計28名の博士後期課程学生が集いました。この5日間のプログラムで、参加者はテーマに関する講義聴講や専門家との意見交換、英国の医療技術発展の歴史的軌跡をたどるウォーキングツアー等を通じて、Good Health and Well-beingに関する理解を深めました。最終日にはGood Health and Well-beingを実現するための課題とそれを解決する研究プロジェクトを各チームが発表し、異なるバックグラウンドを持つ者同士がチームとして協働することの楽しさや難しさを見出した充実した5日間となりました。

なお、本学においては、リベラルアーツ研究教育院の猪原健弘教授、金子宏直准教授、小泉勇人准教授(環境・社会理工学院で授業を担当)、環境・社会理工学院のブンユボル・サシパ特任講師、留学生交流課***のスタッフが参画し、インペリアル・カレッジ・ロンドンのGlobal Fellows Programmeと本学リベラルアーツ研究教育院の開講する博士文系教養科目「Global Camp 1」を基にプログラムを実施しました。

1日目:Good HealthとWell-beingについて学ぶ

インペリアルと本学からの参加学生28名と両学の担当教職員がインペリアルのサウスケンジントンキャンパスに一同に会し、いよいよプログラムが始まりました。

開会セレモニーの後、参加者は専門分野や国籍などの多様性を考慮して、5名または6名の学生の5チームに分けられた参加者たちは、初対面の緊張感が漂うのも束の間、アイスブレーキングのアクティビティを通して、すぐに打ち解けていました。インペリアルと東工大のコーチ陣と共に5日間を過ごし、Good Health and Well-beingの実現につなげる議論を進めていくことになります。

午後は、早速、テーマに関連した様々な分野で研究を行う専門家5名による、レクチャーを受講しました。

5人の講師の一人、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の町山和代助教は、「理想的な子供の数は?」などと学生に問いかけながら、人口学の視点で健康と幸福についてレクチャーを行いました。

また、2011年から7年間、本学工学院機械系で教員として在職し、現在はインペリアルのダイソンスクール・オブ・デザインエンジニアリングで教鞭をとっている、セリーヌ・ムージュノ准教授は、文化を超えてヒトを中心に考える、プロダクトデザインについて、レクチャーを行いました

異なる分野の研究者の話を聞き、人々の健康と幸福の実現を目指して、各分野で取り組まれている研究、それらの課題等について多方面の知識を吸収する貴重な機会となりました。

アイスブレーキング
棒を使った、アイスブレーキングのアクティビティ
町山助教によるレクチャー
ムージュノ准教授によるレクチャー

2日目:チーム力強化 

午前中は5つの課題をチームでクリアしていくゲーム型のアクティビティが行われました。いずれもコミュニケーション力やチーム内で協力しあえる信頼関係ができているかがカギとなります。本学の猪原健弘教授考案の研究倫理について正しく理解するアクティビティもその中の一つでした。参加者達は頭を悩ませながらも互いに声を掛け合って課題に取り組み、終了後にはチームとしての一体感が飛躍的に高まったようでした。

今回のプログラムの開催会場である、インペリアルのサウスケンジントンエリアには、ロイヤルアルバートホール、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム、自然史博物館、科学博物館が隣接し、通称「アルバートポリス(Albertopolis)」と呼ばれています。2日目の午後は、各チームでアルバートポリスの美術館もしくは博物館を訪問し、その展示内容についてまとめて発表を行いました。 

チーム全員でタスクに取り組む
研究倫理チャレンジ
自然史博物館のシロナガスクジラの標本
自分たちが訪問した博物館の展示物に関する発表

3日目:スタートアップについて学ぶ

3日目は、会場をホワイトシティキャンパスに移し、医療技術の事業化について学びました。

まず、インペリアル研究者による医療技術の事業化を支援するプログラム「MedTech Accelerator」責任者、Anne Roquesさんによる、医療技術の事業化と同プログラムのサポートに関するレクチャーを受講しました。

続いて、インペリアル卒業生で、自宅でのリハビリテーションを支援する、スタートアップ企業「Neubond」を設立した、柏倉淳平さんが、事業化のプロセスにおける心構えや避けるべき落とし穴等について、自身の経験をもとに紹介しました。

その後、各チームに分かれ、「Good Health and Well-being」の課題とその解決策について、具体的なディスカッションを行いました。

柏倉さんによるレクチャー
具体的なディスカッションを始める
チームで各プロジェクトに関する具体的なディスカッションを開始

午後は、青空から一転雨が降るイギリスらしい天気の中、ロンドンサウスバンク地区にあるイギリスの医療発展の歴史の軌跡をガイドとともに巡りました。

ロンドン・アイ
ナイチンゲールが看護養成学校を設立した、セント・トーマスホスピタル前でガイドの説明を聞く参加者たち
ビッグベンと国会議事堂

4日目:プロジェクトの集中検討とポスター製作

4日目は、いよいよグループプロジェクトに本格的に取り掛かります。前日にホワイトシティキャンパスでまとめた案を基にグループでブレインストーミングを行い、ディスカッションを重ねて、チームで一つのプロジェクトを組み立てます。多様性豊かなチームメンバーからは様々な意見が飛び交い、時には議論が白熱して一つのプロジェクトに絞り込むのに苦労している様子も見られましたが、皆が根気強くメンバーの意見に耳を傾け、各々がチームに貢献しようとする姿勢を見せていました。

その後、各チーム2名が他チームの前で自分たちのプロジェクトについて短いプレゼンテーション(ピッチ)を行いました。各チームメンバーから出された質問やアドバイスを自分のチームへ持ち帰り、プロジェクトの再考を行い、最終発表に向けて、さらにディスカッションを重ねました。

ピッチの様子

5日目: プロジェクト発表

最終日。プログラムの集大成となるプロジェクト発表を行いました。チーム内で作業分担しながらカラーペンと紙だけで発表用ポスターにまとめ上げ、5分間の発表に臨みました。

インペリアルのマギー・ダルマン教授(OBE、副学長(国際担当)、アソシエイト・プロボースト(アカデミック・パートナーシップ担当))、高田正雄医学部イヴァン・マギル卿麻酔教授が審査員を務めました。

各チームのオリジナリティー溢れるプロジェクト内容から、参加学生達が真剣に人々の健康と幸福の実現に向け議論した痕跡が見えるようでした。

チーム5による発表
チーム4による発表
チーム3による発表

全チームの発表が終わると、審査員からCollaboration 賞とInnovation/Creativity 賞の発表が行われ、健康状態を感知する機能を備えたスマートトイレを提案した、チーム2がCollaboration賞を、光触媒を活用して、水に含まれるバクテリアや菌を消滅させ、水系感染症を撲滅する装置を提案したチーム1がInnovation/Creativity 賞を受賞しました。

該当チームには、両大学のT-シャツが授与され、また、参加者全員に修了証書が授与されました。

Collaboration 賞 (チーム2)
阿部大綺、Wishnu Agung Baroto、Jinpei Han、高田教授、ダルマン副学長、
Suchaya Mahuttanatan、Giselle Raisa D’Souza (左から右)
Innovation/Creativity 賞(チーム1)
髙木 聡太、Zhiqiao Pan, 高田教授、ドルマン副学長、Dominika Daremiak、  
William Rodriguez Kazeem、鈴木みゆき、Ares Arrad (左から右)

午後には、フェアウェルのお茶会が催され、会の冒頭では、日本学術振興会(JSPS)ロンドンセンターの小林直人センター長が挨拶を行い、国際協力員の宮浦由衣さんが博士後期課程学生を対象とした外国人特別研究員招聘事業について説明をしました。

続いて、各チームの代表者がチームメイトの健闘を称え、チームコーチやスタッフに感謝の言葉を伝えました。会の途中、スライドにまとめられた写真を見ながら、5日間のプログラムを振り返り、時の流れの早さに驚きながらも、5日間をともに過ごした友人たちと思い出を共有し、再会を願っていました。

各日のフリータイムには、両大学の学生が連れ立って、ロンドンのパブや観光スポット巡りをするなど、プログラム外でも交流は続きました。ここで築かれた学生たちのネットワークが未来の更なる研究交流を生むことを願ってプログラムは幕を閉じました。

なお、東工大生の参加者は2025年3月までに、1~3か月間インペリアルの研究室に滞在し、受入教員の指導のもと実地調査や研究を行う予定です。

その他 ‐英国のインクルーシブな取り組みを体験

今回のGFPプログラムテーマのウェルビーイングと関連して、誰もが暮らしやすいインクルーシブ(包摂的)な社会を進めている英国の状況を把握するため、アクセシブルタクシーの乗降を金子宏直准教授が体験しました。

ロンドン市内を走るブラックキャブの多くが、車いす用のスロープを装備しています。
講習を受けた運転手が車いす利用者の乗り降りをサポートしてくれます。

*東京工業大学(Tokyo Tech)は、2024年10月に東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学(Science Tokyo)となりました。

**留学生交流課は2024年10月の東京科学大学発足後、国際教育課となりました。

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